2023年2月6日月曜日

夏目漱石「私の個人主義」を読んで

 エリーです。今回は夏目漱石の「私の個人主義」(講談社学術文庫)という本について書きたいと思います。この本は夏目漱石の講演集です。「私の個人主義」という講演は、大正3年の晩秋、夏目漱石が40代後半の時に行われたもので、今の私とあんまり変わらない年齢ということになります。

 私は、以前祖母に「エリーちゃん(私のこと)は個人主義ね。利己主義は良くないのよ。」と言われたことがあります。その後に夏目漱石の「私の個人主義」という本を見つけたのです。そして、個人主義について考えてみました。


 「個人主義」とは自己中心的に好き勝手に生きることではなく、主体的に行動し、自分の個性を尊重すると同時に他人の個性を尊重することです。主にアメリカやヨーロッパなどの考え方です。(私はヨーロッパ人の生まれ変わりなのかも知れませんね。)

 「主体的」とは、自分で考えて行動し、自分の行動に責任を持つことです。他からの指図や干渉によらず、やるべきことを決めるのは自分だということです。

 

 それに対して「集団主義」とは、個人が集団の一員として行動することで、集団の目標や利害を自分のものよりも優先させていくという考え方です。自分のことを優先すると、それが利己主義ととらえられます。 

 「集団主義」は皆で良いことをする時は良いですが、第二次世界大戦中の日本など、社会全体が悪い方向に進んでいる時は皆が悪いことをしてしまうことがあります。戦争に反対する人は非国民扱いなど、違う考え方を持つ人はいじめられたりしやすいというデメリットもあります。

 また、「集団主義」で主体性を持たず、人に任せきりで決定を相手に委ねると、誰も責任を取ることができなくなります。日本は仕事を集団で取り組んでいるので、責任の所在も不明確になることが多いです。誰も責任を取らないことで欧米から非難されやすいようです。


 私は、人に「ああしなさい。こうしなさい。」と言われて行動するのは何だか窮屈に感じます。

 私は学生時代には母に「家事はやらなくていいから勉強してほしい。」と言われていました。でも学校を卒業してからは、よく父に「早く茶碗を洗いなさい。」と言われることが多くなりました。その時、家には合成洗剤しかなかったので、私は全く家事をやる気にならなかったのです。

 しかし、そういう時病気で亡くなった弟は、「『ああしなさい。こうしなさい。』と言わずにその人がそうするまで待った方が良いよ。」と言ってくれたことがあります。弟は味方になってくれたのです。


 でも、今は「合成洗剤しかないから何もしない」というわけにはいかないので、環境に悪影響が少ない無添加の石鹸を母に買ってもらって家事をしています。やはり、毒を流すのは罪になると私は思っているのです。(私には毒を見分けられる能力があるようで、成分の表示を見なくても、それが合成洗剤と分かる時があるのです。)


 「会社に入って何でも人の言うことを聞いていれば楽だ。」と母が言うことがありますが、本当はそれでは困る時もあるのではないでしょうか。

 私は昔、林野庁などが「草刈りをする代わりにヘリコプターで森に除草剤を撒いてしまって、木を枯らしてしまった」という話を聞いたことがあります。もしそんな風に上司が指示したら、私はどうしたら良いのか分からなくなると思うのです。

 他人から指図されて行動すると、それが間違っていることだった時に困ると思います。自分で責任が取れなくなるのです。


 私は、仕事をする時は人に指図するだけではなく、「あなたはどう思う?」や、「あなたはどうしたい?」など、まずその人の意見や意志を聞き、話し合うことが重要だと考えています。自分の意見と他人の意見の両方を考え合わせるのです。


 「他の存在を尊敬すると同時に自分の存在を尊敬する」というのが夏目漱石の「個人主義」の解釈です。私はこんな風に生活できたら素晴らしいと思います。


 夏目漱石の「私の個人主義」の中には「僕は左を向く、君は右を向いても差し支えないくらいの自由は、自分でも把持し、他人にも附与しなくてはなるまいかとかんがえられます。」と書かれています。つまり、「人を自由にしなくてはいけない」と夏目漱石は考えているのです。


 そして、この本を読むと、夏目漱石は若い時に仕事で悩んでいた時期があったようです。  

 この本の中に「例えば西洋人がこれは立派な詩だとか、口調が大変良いとかいっても、それはその西洋人が見る所で、私の参考にならん事はないにしても、私にそう思えなければ、到底受売をすべきはずのものではないのです。」と記述があります。このように、漱石はイギリス留学の時に自分の意見を曲げてはならないことに気づきます。

 「私はこの自己本位という言葉を自分の手に握ってから大変強くなりました。」と、今まで他人本位だからだめだったことに漱石は気づくのです。

 私は、自分の意見や評価を土台にするのは大切なことだと思います。


 そして、この本には「ああここにおれの安住の地があったと、あなた方の仕事とあなた方の個性がしっくり合ったときに始めていい得るのでしょう」と書かれています。

 この講演は若い人に向けて、自分で突き進んでいくことの大切さを説き、「他人の後に従ってそれで満足するのも悪いとは言わないが、将来仕事をする上で自分の個性に合う仕事を見つけることが大切だ」ということを夏目漱石は言いたかったようです。


 この夏目漱石の「私の個人主義」という本は、難しい本ですがとても参考になりました。この本に書いてあるように、「私の個性に合う仕事」もみつかったら良いなと思います。